中尾佐助資料の軌跡

中尾佐助資料の10年 第1期事業

この記事(第1期事業)は、学術情報センターの広報誌『アウリオン』第19号(2003.10)に掲載されたもの(一部修正)です。

中尾佐助資料の受贈と中尾佐助コーナーの開設

 本学名誉教授故中尾佐助先生が遺された学術研究資料が、平成6年(1994年)4月総合情報センターに寄贈された。ご遺族で本学総合科学部の平木康平教授よりの申し出を受け、金子務初代所長と農学部の保田淑郎名誉教授の尽力で受入が進められた。
 同年の夏、搬入された資料を保田教授の指導によって仕分けし、初冬には梅棹忠夫氏をお招きし、公開講演会「中尾佐助と照葉樹林文化論」を開催するとともに、中尾佐助コレクション展「照葉樹林文化論の原風景」を行った。
 平成7年(1997年)2月には、旧蔵図書約3500冊、雑誌60誌を本学図書館検索システムに収録・公開し、中尾佐助コーナーが地下1階(現在は1階)に開設された。(参照1)



コレクションの特色

 中尾佐助コレクションには、照葉樹林文化論を中心とする著書18点、論文や雑誌・新聞等の記事640点のほか、生涯で25回に渡る海外学術探検のおりのスライドや写真、記録ノート、計画書などのオリジナル資料類、研究活動を跡づける研究資料類、そして研究過程で参照されたであろう膨大な資料類が含まれ、探検資料はその特色をなしている。(参照2)
 平成7年度には、著書を除く全文献をコピー製本した研究用の館内資料が作成された。(参照3)
 またこの年には、これらコレクションが著書・文献類、オリジナル資料類、研究資料類、参照資料類の4つに分類・整理され、中尾佐助コーナーに配置された。平成8年度にはこれらの総目録が出版され、関係諸機関に配布された。(参照4)
 中尾資料を活用して照葉樹林文化論を展開しようとする照葉樹林文化研究会が発足し、中尾資料運用の担い手となっている。(参照5)



ホームページの立ち上げ

 平成11年(1999年)4月には、本格稼働したキャンパスネットワークシステムによりホームページのコンテンツのテスト版が、平成12年(2000年)4月にはその検索システムも公開された。
 ホームページの構成は、中尾佐助の紹介(年譜、海外探検調査歴、著作リスト)、中尾佐助資料および中尾佐助コーナーの紹介、そしてキーワードおよびブータン地図からのスライド検索サイトを準備している。キーワード検索では、中尾佐助の著作の掲載写真に付した説明文や注記から切り出した用語とプロジェクトチームが付与した事物名称などから検索できる。地図からの検索では、ブータンにおける調査地点からの絞り込みが可能で、さらに調査行程から時系列にサムネイル画像を一覧することも出来る。アクセスするには、大阪府立大学学術情報センター(http://www.center.osakafu-u.ac.jp/)から図書館のホームページを開き「中尾佐助スライドDB」をクリックするか、次のURLを直接指定されたい。(http://nakao-db.center.osakafu-u.ac.jp/



資料利用の動向

 研究用の中尾佐助資料はTVや雑誌の特集でよく利用されている。探検家としての中尾佐助と照葉樹林文化論を提唱した植物学者としての中尾佐助を特集するものがある。いずれの場合も、編集者やカメラマンが来館して数日かけてテーマにあったスライドや資料を探し出している。それぞれのマスメディアでの使用には著作権との関係もあるので、生命環境科学研究科の山口裕文教授(照葉樹林文化研究会世話人代表)が相談に応じている。



第2期事業へ

 中尾佐助スライドのデータベース化は、花と緑の博覧会記念協会よりの助成を受けて平成18年(2006年)から全スライドについて進められ、本学が情報発信する貴重な学術資料として整備されています。スライド画像およびフィールドノートの電子化とともに利用者間情報共有システムも構築されています。(参照7)



(参照1)所長対談中尾佐助コレクションをめぐって『大阪府立大学総合情報センター報アウリオン』第2号(1994.9)
(参照2)特集:アジア資料コーナーと中尾佐助コレクション『大阪府立大学総合情報センター報アウリオン』第3号(1995.3)
(参照3)『中尾佐助著述彙編』大阪府立大学照葉樹林文化研究会,大阪府立大学総合情報センター編 1996.3
(参照4)『中尾佐助文献・資料総目:照葉樹林文化論の源流』大阪府立大学総合情報センター編 1997.3
(参照5)『照葉樹林文化論の現代的展開』金子務・山口裕文編著 北海道大学図書刊行会 2001.9
(参照6)中尾佐助資料における照葉樹林文化関連スライドのデータベース化と検索システムの構築について『総合情報センター年報情報』第5号(1999.3)
(参照7)中尾佐助資料スライドデータベースの構築と利用者間情報共有への展望『レコード・マネジメント』第41号(2000.11)


中尾佐助資料の20年 第2期事業

 2004年~2006年には全文献と保存スライドをもとに編纂された中尾佐助著作集(全6巻、北海道大学図書刊行会・出版会)が刊行され、著作集全6巻は宮内庁へ贈呈されています。
 平成18年(2006年)4月から平成21年3月まで「財団法人 国際花と緑の博覧会協会」の助成と大阪府立大学学長裁量経費により、照葉樹林文化研究会の指導のもとで中尾佐助探検スライドデータベースが増補改訂されました。すべての探検におけるカラースライドはコマ毎にスキャンしTIFおよびJpegファイルに変換されました。さらにスキャン画像は、スライド外枠部分をトリミングし、保存用ファイルと公開用ファイルを作成し、サムネイル用の縮小ファイルを準備しました。ブータン1958年の画像も再度スキャンし、すでに公開していた画像をレプレイスしました。 すべてのコマに、撮影日、場所、キーワード、著作情報(書名およびキャプション)を関連づけ、継続的な検証によってデータは修正されています。それぞれの情報群は別のデータファイルとして複数を保存し、ウェブでの書き換えやエラーの発生に際して修復できるようになっています。 また、閲覧者によるコメントを蒐集するための書き込みフィールドを準備し、研究利用登録者に公開しています(一般公開は準備中)。 データベース化されたカラースライド28000枚は、2009年2月28日に一般公開されました。
 引き続いて、フィールドノートが電子化され本学リポジトリに登録されています。
 2011年には中尾佐助資料に基づいて『秘境ブータン』の著作が検証され、岩波書店より文庫本として再版されました。

中尾佐助資料の現在 (第3期事業)

  2014年からスライド情報とフィールドノート情報との突き合わせが進められ、一般公開以降に得られたコメントを参考にして2015年2月には一部の探検スライドの撮影日および撮影場所が修正され、キーワードが追加されました。2016年3月にはフィルム番号とコマ番号が乱れていたシッキム・アッサム探検のフィルム番号が修正されました。2017年4月には東ネパールの探検スライドについても改訂されました。
 2017年には、スライドDBの行程表が改訂され、リポジトリ化されたフィールドノートとのリンクが完了しました。
 2016年には、照葉樹林文化研究会(代表世話人大阪府立大学大学院人間社会システム学研究科大形徹教授)の研究成果を収載した『「中尾佐助 照葉樹林文化論」の展開-多角的視座からの位置づけ』(北海道大学出版会)が公刊され、中尾佐助の探検の内容が解説され、スライドDBから精選された600コマの精密画像がCDで提供されています。
 現在、海外調査時のモノクロフィルム画像と国内での研究スライドの電子化の計画が進められています。

 


中尾佐助スライドデータベース

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